ぬいぐるみを見たとき、すごく言い方が悪いけど、わたしにはガラクタにしか見えなかった。
「おもちゃコンサルタント養成講座」だって、「ボードゲーム」と「遊び」に興味があったから受講しただけで、「おもちゃ」というものには全然興味がなかったのだ。
おもちゃコンサルタントの第2回目の授業の話。
ただ不思議だなと思う感覚を大切にしたい
おもちゃ美術館主催のこの講座。この日はまずおもちゃのツアーがあり、研修を受けた「おもちゃ学芸員」さんがおもちゃの話をしてくれた。
おもちゃ美術館では、子どもの「これはなんだろう?」という感覚をすごく大切にしているそうだ。例えば磁石で動くおもちゃがあったとしても、「磁石なんだよ」とは言わない。
確かに私たち大人は一目で「磁石の動きだな」とわかるけど、この世に磁石というものがあることを知らない人が見たときに、どんな感覚がするだろう?
ただ「不思議だな」と思う感覚を、大切にしてほしい。
学校で磁石というものを知ったときに、その秘密がわかれば嬉しいじゃない?
お受験用の頭がよくなるおもちゃですよなんて言わないし、良質のおもちゃで結果的にすごく知的好奇心旺盛のお子さんに育ってお受験に合格したとして、
遊んだおもちゃはそのためにあったものじゃないんです。
伝説のおもちゃ販売員さんの講義
教室に入ると、中央にぬいぐるみが沢山置かれていた。
この日の先生は、「伝説のおもちゃ販売員」と呼ばれた宮森先生。
宮森さんは、「グランパパ」という「劇場型エンターテイメントおもちゃ屋」の第一号店で働いたそうだ。
ぬいぐるみパンダの出産
グランパパでは、妊娠中の巨体パンダのぬいぐるみ…というものを売っていたそうだ。
お腹の中心には糸が出ていて、出産すると赤ちゃんが何匹か出てくるようになっている。
お客さんが購入した後、ちょうど100日目に、出産儀式をする。出産数日前にはスタッフであり”お産婆フェアリー”であるお姉さんがお客さんの自宅に電話をかけ、
「最近体調はどうですか」とパンダの母体の様子を尋ねる。
するとお客さんも「最近ちょっと食欲がなくて……そろそろですかね」などと答えるそう。
当日はパンダを連れてきてもらい、出産する。お腹の糸を解いて、赤ちゃんを祝う。スタッフ全員で、ハッピーバースデーを歌う。歌のクオリティまで徹底し、低音と高音に分かれて練習を重ねたそうだ。
お店の中は「舞台」。
目には見えない、なにか
不思議な気分になった。
ぬいぐるみやおもちゃは、子どもだましだと思っていた。大人が子どもと直に接しているのが面倒だから、与えて時間をごまかすための道具なのだろうと。
逆に最近の高価なおもちゃで「お受験のための教育に良いおもちゃ」なんてのもあり、どれもこれも、どこか子どもをバカにしている感じがした。
だからか、宮森さんがふざけるのでなく、子どもに媚びるのでもなく、
「ぬいぐるみを普通に大切なものとして、まるで生きているものとして」扱っているのをみていて、すごく泣きたくなった。
ぬいぐるみとは、夢であったか。愛であったか。目には見えない何かであったか。
自分がガラクタ扱いしていたぬいぐるみから、豊かな時間を作り出している姿を見ていて、とても癒されたのだと思う。
始めは「何か巨大なパンダいるわ」程度の認識だったのが、妙にかわいく見えた。
↓宮森さん愛用のパペットの猿。もこもこのサルは宮森さんの腕に顔をうずめて本当に恥ずかしそうにしており(!)会場から「可愛い~!」と声が上がっていた。
- 出版社/メーカー: Folkmanis Puppets
- 発売日: 1993/07/01
- メディア: おもちゃ&ホビー
- この商品を含むブログを見る
イエス、ヴァージニア
最後に「イエス、ヴァージニア」というエピソードも紹介された。
今年はサンタさんプレゼント何をくれるのかなぁ、と楽しみにしていたクリスマスの時期に、
「ばっかみたい。サンタなんていないんだよ!」って同級生に言われた女の子が、真実を求めて新聞社にお手紙を書いた話。
「もちろん、ヴァージニア、サンタクロースは本当にいるよ」 (Yes, Virginia, there is a Santa Claus) – PLAYNOTE
サンタがいないって?
誰もサンタを見たことがない、でもそれは、サンタがいないってことの証明にはならないんだよ。
「目には見えないものを信じる心」
を理解する人、それがおもちゃコンサルトなんですよ、あなたたちはそうあってください。というお話だった。
「サンタクロースはいるよ」
いつか自分が答えるなら、それは「子どもの頃くらい夢を見せてあげようよ」「現実なんて見せなくても良いじゃん」というオトナな気遣いではなく、
「君のことをいつも見ていて、クリスマスには大好きなものをプレゼントしてくれる素敵な大人がいる」真実として、伝えてあげたいなぁ、と思った。
癒しの授業。
(↑ひもをひっぱるとピエロが珍妙なポーズをとる愉快な遊び。20回くらいやった)